生み育ててくれた人であっても

ケアマネージャーは要介護者とその家族の状況を見て、どの介護サービスが必要かを考え、単位を計算しながらケアプランを立てるわけです。そこには1割負担を超えないようにしたいという配慮もありますし、限られた財源(介護保険料50%、国や自治体の公費=税金50%)が頭にあり、できるだけ抑えたいという意識が働くこともあるようです。もちろん利用者が必要としているのなら限度枠ギリギリまでサービスを提供してくれますが。

うちの場合は私が介護をしていたこともあって、限度枠まで余裕がある状態でしたが、自分で介護をする気がなく、それを介護サービス事業者に丸投げしてしまおうとする人は、ケアマネージャーの配慮などお構いなしに、多くのサービスを要求したりするようです。もちろん上限を超えれば、そのサービスは利用者の全額負担になるわけで、ケアマネージャーもそれを説明するそうですが、なかなか理解してくれない人もいるといいます。

また、自分で介護をせず介護サービス事業者に任せるケースは、どうしても独居か老老介護になります。

ひとりのケアマネージャーが担当するのは最大39人。そのなかでも独居の人はどんな状況にあるのかチェックする必要があるため、1日に1回は訪問するようにしているそうです。それが仕事とはいえ40人近い利用者に目配りをしたうえ、そうした独居の介護者の見守りをするのは大きな負担になります。

Fさんは、そうした負担の原因となっている親の介護をしようとしない人がいるのも仕方がないと受けとめているようです。ただ、こうも言っていました。

「自分を生み育ててくれた親が要介護になっているんです。どのような事情があるのか分りませんが、少しは心配し、介護しようとする気になるのが人というものじゃないですか。そういう感覚がない人が結構いることには暗然としてしまいます」

介護の現場にはこうした現実があることを知り、驚いたことはいうまでもありません。

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