5.ずる賢く策を弄してごまかしていないか
子曰く、なんじ人を得たるか。
曰く、澹台滅明という者あり。
行くに径に由よらず。
公事に非ざれば未だかつて偃(えん)の室に至らざるなり。
最後は上の論語。長いので要約しましょう。ある国の長官になった弟子に先生が「いい部下を見つけることができたかね」と尋ねると、弟子は、ある人物の名をあげて言った。
「公正な人物で、妙に近道をしてごまかすことがありません。公事でなければ(長官である)私の部屋(や家)を密かに訪ねることはありません」。
ポイントは「径(こみち)」。近道や裏道を探したり抜け駆けしたりといった姑息な手段で仕事をすることはよくないという教訓を述べています。私が100回以上読んでいる松下幸之助さんの『道をひらく』にも似た表現があり、うまくいかないときも策を弄してはいけないと書いてある。「大道」を歩もうということです。
径ではなく大道。私流の解釈では、これはやはり原理原則をきちんと勉強して、それに則った生き方していくということなのだと思います。
それは、繰り返しになりますが、「利」ではなく「義」を優先した働き方。ただし「義」は自己を犠牲にせよということではありません。会社も社会も、そして自分も家族も同時に串刺しできるようなうまい案をひねり出し、正々堂々と実践することこそ「大道」と言えるのです。
※言葉の出典は『論語の活学』(安岡正篤著)
経営コンサルタント
小宮コンサルタンツ代表取締役。1957年生まれ。京都大学法学部卒業後、東京銀行入行。米・ダートマス大学エイモスタック経営大学院でMBAを取得。岡本アソシエイツ取締役などを経て現職。