まったく共通項が見つからないときは妄想力で共通項を捻り出す手もある。
「クリスマスに渋谷のおしゃれなカフェで、男同士ですがケーキセットを食べながら打ち合わせしていたときのこと。お互いあまり馴染みがなかったので話は途切れがち。ふと周囲を見回すと時節柄カップルだらけ。
それで『もしや僕ら、そっち系のカップルと思われてませんかね』と小声で言ったら、相手も『急いで食べて出ましょうか』と苦笑い。そこでちょっと打ち解けましたね。そういう妄想の世界に引っ張り込んでもいい」と田中さんは説明する。
それでも現場で機転を利かせるのはなかなか難しい。ならば時間があるときに準備すればいい。要するに事前研究だ。
事前に相手のことを調べておけば、会話の引き出しも増える。
「ビジネスで初対面の場合、提案や営業をする側は、相手のことを徹底的に調べておくべき。まずインターネットで名前を検索してみる。本を出している人なら読んでおく。そういう事実確認が不可欠」とエステーの鹿毛さん。
一方、雑談の場で相手が目上の場合、勝手にこちらから話題を振るべきではないという。
「話のテーマは、目上の人やお客様に選んでもらう。“会話の上座”みたいなものです。テーマといっても、『今日は暑いね』でも何でもいいから、目上が切り出すのを待つ」(鹿毛)
上座の話を受けて、「話を膨らませることはいいが、トピック自体を変えてはいけない」と鹿毛さんは指摘する。
「例えば、接待相手の社長が『最近、薄型テレビが売れてないらしいな』と上座を取ったら、『ええ、○割減だそうですね』と膨らませるのはいい。でも『売れてないといえば、化粧品も売れてないらしいですよ』は×」(鹿毛)
【○】僕も奈良県出身の広島ファンなんです。
【×】売れないといえば化粧品も売れないですね。
田中イデア
テレビ、ラジオの番組構成などで活躍するほか、ワタナベコメディスクール、東京アナウンス学院などで講師を担当。著書『ウケる!トーク術』がロングセラー中。
伊藤大悟
1979年、奈良県生まれ。同志社大学文学部卒業後、2003年入社。中国地区最大手量販チェーンを担当するエース社員。状況が悪くなるほどに底力を発揮する広島の予算必達請負人。
鹿毛康司
1984年、早稲田大学商学部卒業後、旧・雪印乳業に入社。93年、米国ドレクセル大学でMBA(経営学修士)取得。2003年からエステー化学(現エステー)にて現職。著書『愛されるアイデアのつくり方』がベストセラーに。