人事が経営のもっとも大きなメッセージ

──グループビジョンはどのような思いで策定したのか。

【後藤】私は06年の3月27日、グループビジョンを策定しました。グループビジョンの原点は「スマイル」です。西武グループの信用不安や世間のバッシングの中で社員たちが士気が低下している中で、「これを何とかしなければならない」という思いで、西武鉄道やプリンスホテルなどに会社や仕事に対する思いをアンケート調査し策定しました。私は以前、銀行にいたときにも「ビジョン」をつくりましたが、それは率直にいって、あまり求心力がなかった。ビジョンはあくまでもビジョン、仕事と深い関わり合いがあると実感していなかった。西武に来てはじめて「ビジョン」は会社の背骨であり、羅針盤であることを痛感しました。

──社員の意識を高めていく、変えていくという点で、一番苦労した点は。

【後藤】私が05年2月に来たときにびっくりしたのは、社員がばらばらだったということです。グループ間の人事交流や面識もなく、他のグループ会社の社員にどこか違和感を持っている。これではグループ全体を統括していくのは難しい。

人事的な面で一体感を持たせるために、持ち株会社の西武ホールディングスをつくったわけです。持ち株会社を中心にグループを運営し、グループ間の人事交流も相当活発にやりました。

西武鉄道社長の若林久さんは伊豆箱根鉄道の社長だった。一方で伊豆箱根鉄道の社長をやっている中村仁君は、西武鉄道専務から伊豆箱根鉄道社長に昇格した。かつての西武グループではとても考えられなかったと思います。

私は人事が経営のもっとも大きなメッセージの一つだと思っています。従業員に対しても、「会社は変わらなければならない」「グループで一丸となって問題に取り組んでいかなければならない」というメッセージもしっかり伝わったと思います。