家族の誰が介護すると父の負担が減るか考える
そこで頼りたくなるのが家族です。
ひとりでつきっきりの介護をするのは限界があります。家族のサポートがあれば、それが少しは軽減できるわけです。しかし、これが結構難題です。
まず、妻です。要介護者が母親の場合は厳しいでしょう。嫁と姑は、どんなに歩み寄ろうとしても歩み寄れない溝が大なり小なりあるものです。姑が要介護になったら大半の嫁は、よほど切羽詰った状況でない限り「介護なんか無理」というのではないでしょうか。
ウチの場合は父親であり、それほど妻と父に溝はありませんでしたが、それでも介護は頼めませんでした。父が寝たきりになり、シモの世話が必要になった当初、実の息子の私がその処理をさせるのでさえ、父は精神的つらさに耐えかねているようでした。まして嫁にそれをさせるのは許さなかったと思います。妻もそれを察したようで、介護は私に任せっきりでした。
妻の両親は健在ですが、もし要介護になったら、その介護はシモの世話を含め、実の娘である妻がちゃんとすると思います。「実の親子」であるかどうか。介護にはそうした部分も関係してくる。実にセンシティブな問題であることが、実際に介護を経験して実感しました。
介護者の子、つまり要介護者の孫はどうでしょう。
孫が幼少時、祖父や祖母と濃密な関係を持ち、おじいちゃん子だったりおばあちゃん子であって、情があれば介護もするでしょう。私には娘がひとりいますが、子どもの頃は両親とは別居していたため、それほど情のつながりはありません。だから娘も父の介護では、私を傍観するだけでした。
核家族化が進んだ今は、そうした家庭がほとんどだと思います。というわけで、家族のサポートはかなり高いハードルなのです。
ただ、家族が介護のサポートをしてくれるかどうかは、その性格にも左右されるような気がします。
父親の介護に関わった人たちを見ていて感じたのは、世の中に人の世話をすることを苦にしない、というよりむしろ喜びとしている人がこんなにいるのかという驚きでした。
訪問看護師さん、ホームヘルパーさん、訪問入浴のスタッフさん……。もちろん職業意識もあるでしょう。が、それだけではない、人に奉仕することを喜びとしている感じが確かにありました。そうでなければ、とても続けられない仕事でもあります。もし家族がそのような性格だったら、進んで介護のサポートをしてくれるかもしれません。