アカデミックな世界では、分解そのものに意味があるが、ビジネスの世界において分解は手段である。適切な打ち手を見出すために分解するのである。

見方を変えれば、切り分けた要素ごとに問題解決の打ち手が異なるのがいい分解であり、打ち手が同じであれば分類する意味はあまりない、ということだ。

以上の前提を踏まえ、「足し算の分解」と「掛け算の分解」について見ていこう。

まず「足し算の分解」とは、一見すると一つにまとまって見える事象を、何らかの切り口で分類していくことを指す。分類によって特性の異なるグループを別の扱いとし、それぞれの特徴をつかめるようにするのだ。

「足し算の分解」の例としては、前述した売り上げに対する男女別のほか、年齢別、地域別など多くの切り口がある。マーケティングにおけるセグメンテーションや、財務分析においてコストを固定費と変動費に分けるのも同じ発想である。

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図2:適切な「分解」が分析の質を高める/図3:取り組むべき課題は分類して優先順位を明確にせよ

ここで重要なのは、切り分けた要素ごとに数字のトレンドが大きく開くような分類方法を意識して見つけ出すこと(図2)。

「セグメンテーションを例にすると、一つだけポンと売り上げが跳ね上がっているセグメントを発見できれば、投入する資源をそこに集中しようといった打ち手がはっきりしますよね。わざわざ分類する目的は適切な打ち手を見出すことですから、いろんな切り口から分類してみて、尖った傾向を示す要素を探し出すことが大切になるわけです」(細谷氏)

もう一つ、「足し算の分解」において注意すべきことがある。それは全体を「もれなくダブりなく」分解することだ。これは「MECE(Mutually Exclusive Collectively Exhaustive)」とも呼ばれ、論理思考を行う際に必須の概念である。もれやダブりがあると、後で発見されるたびに追加作業が発生してしまうからだ。

同時に、分類する要素は同じレベルの概念でなければならない。そうでなければ「足し算」が成立しなくなる。

一方、「掛け算の分解」とは、一つの事象を構成要素に分解し、それぞれのメカニズムを解明することである。「因数分解」と言ってもよい。これにより、全体の中でボトルネックがどこにあるのかを探るのだ。

「例えば、ある雑誌の書店売り上げが伸び悩んでいるとしましょう。雑誌の場合は部数に目がいきがちですが、そのときに『雑誌の総売り上げ=販売部数×定価』と因数分解して考えれば、価格設定を上げる余地があるのでは、という発想が生まれます。そうすれば、増刊号の定価をチャレンジングな設定にして反応を見る、といった施策も生まれてきます」(同)