さらに「掛け算の分解」の応用として、「ステップを経て絞られていく」事象の分析がある。「一定のスクリーニングプロセスを経て最終出力に至る」事象と言ってもよい。

例えば、一次から三次まである資格試験で総数1000人の受験者に対し、一次試験に500人が合格し、二次試験では100人、三次試験で10人が残ったとする。この場合、最終的な競争率は100倍になるわけだが、各段階におけるスクリーニングの難しさは異なり、一次試験の競争率は2倍、二次試験は5倍、三次試験は10倍である。

こうして因数分解してみると、三次試験が最も困難なことがわかり、そのための対策が重要であることが見えてくる。あるいは、三次試験が得意な人は大いにチャンスがある半面、三次試験が苦手な人にとってこの資格試験の合格はかなり厳しい、と見通しをつけることができる。

「このスクリーニングプロセスの分析は、複数のプロセスを経てある割合で出力が絞り込まれながら変化するものであれば、何にでも応用できます。試験、営業、人事採用等々。ミスコンテストや『結婚相手探し』もそうかもしれませんね」(同)

また、スクリーニングの数値が利益の大小やコスト削減の度合いといった場合には、横軸に各段階の数値を取り、縦軸に自分たちがコントロールできる度合いを取ってマトリクス(図3)を作成すると、着手すべき要素を浮き彫りにできる。

「横軸が利益やコスト削減の場合、その数値の大小は『やるべきか否か』の判断軸と見なせる一方、縦軸の自分たちがコントロールできる度合いは『できるか否か』という軸と言えます。右上の『やるべき大・できる大』の領域は最初に取り組むべき領域ですが、すでに手がつけられていることが多い。すると、実際に手をつけやすいのは左上の『やるべき小・できる大』の領域です。右下の『やるべき大・できる小』は必要性があるのに何らかの事情で着手できないわけですから、外部のリソースを活用してみる、といったふうに判断していけるようになります」(同)