目の前に横たわる、目を覆いたくなるような惨状。何か早急な対処を行わなければ手遅れになってしまう。なのに、肝心の 「何が問題なのか」 がわからない──。そんな経験をした人は少なくないだろう。問題のツボを押さえる人は、どう数字を操っているのか。

「あれもこれも」では時間が足りない!

例えば担当製品の販売低迷に直面したとき、あなたならどこから手をつけるべきと考えるだろうか?

とりあえず値段を下げてみる。今まで以上に顧客を訪問してみる。あるいは広告出稿を増やしてみる……。

こうした場当たり的な発想による対処は、仮にうまくいったとしても結果オーライにすぎない。再現性がなく、再び同じような問題が発生したときにうまくいくとは限らないのだ。

何らかの問題を解決しようとするときは、やはり問題の原因を探し出し、そこに手を打っていかなければ根本的な解決にはならない。ただし、あれもこれもと問題の原因を探っていたら、いくら時間があっても足りなくなってしまう。ビジネスの世界でこれは致命的である。

つまり、問題解決に取り組むときは、基本的な考え方を知っておく必要があるということだ。そうすればどんな問題に直面しようとも対応することが可能となり、しかも効率的に進めることができる。

では、問題解決のために身につけるべき基本的な考え方とは何だろうか?

図1:「足し算」「掛け算」の分解例
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図1:「足し算」「掛け算」の分解例

その答えは「足し算」と「掛け算」である、と言ったら意外だろうか。2つの初歩的な数式を使いこなすだけで、多くの問題を解決できるようになるのだ。ベストセラー『地頭力を鍛える』の著者である、ザカティーコンサルティングの細谷功ディレクターは次のように解説する。

「問題解決に取り組むうえでの基本的な考え方の一つとしてあるのが、『切り分ける』。売り上げの減少といった問題の全体を眺めているだけでなく、適切な構成要素に切り分けてそれぞれ考えていきます。これを具体化するのが『足し算の分解』と『掛け算の分解』なのです」

なぜ分解するのかといえば、一つの塊に見える問題でも、実は様々な要素で構成されており、それぞれの特性を把握する必要があるからだ。細谷氏が続ける。

「問題を構成する要素の特性が異なる場合、分けて考えないと打ち手を間違えます。例えば全体の売り上げが横ばいでも、男性と女性に分けて見てみたら男性の売り上げは増加しているのに、女性は減少しているかもしれない。すると、全体としての対策ではなく、男女ごとの原因と対策を考えていくことで、よりよい成果を挙げられるようになるわけです」