脳のエネルギー源はブドウ糖であり、デンプンや糖類など、消化されてブドウ糖になる炭水化物を摂取すれば、脳は働く。それが従来の常識だったため、そのデータが信じられませんでした。ただ、私も気になるデータを持っていました。文部科学省と共同で全国の小中学生の認知機能を検査した際、生活習慣も調べたところ、朝食でおかずをとっていない子供が約4割もいたのです。典型はパン1枚か菓子パン1個でしょう。もし、製薬会社のデータが本当なら、憂慮すべき事態です。私は独自に検証を始めました。

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調査2:脳の働きとおかずの関係は?

脳の活動を調べるのに、脳の中の血流の速さから、活発に活動している場所を画像にして映す脳機能イメージング研究という方法があります。これを使い、大学生たちに協力してもらい、朝食として栄養バランスのとれた流動食と、同量同カロリーの砂糖水をそれぞれ摂取したときの認知機能テストの結果を比べてみました。確かに、流動食をとったときのほうが、脳は活発に働いていました。

文科省との先の共同調査の結果も再解析してみると、やはりおかずの重要性が浮かび上がりました。小中学生1400人を対象にした調査では、「朝食でおかずを食べていない人」は各種の認知機能テストのいずれも成績が悪かった(調査1)。また、1年後に同じテストを再度受けてもらった調査で、「朝食でおかずを食べている人」は品数が多ければ多いほど1年間で点数が伸びていました(調査2)

保護者の意識調査も行いました。「朝食の栄養バランスが大事であると知っているか」との問いに対し、「知っている」と「おおむね知っている」を合わせても、6割にしか達しませんでした。これは、子供たちの生活習慣の調査結果と見事に符合しました。つまり、朝食はエネルギーさえとればいいと考えている親が確実に約4割いて、ほぼ同じ割合の子供たちが、朝食でおかずを食べていない。これが日本のまぎれもない現実だったのです。

川島隆太
東北大学加齢医学研究所教授。1959年千葉県生まれ。東北大学医学部卒業。同大学院医学系研究科修了。スウェーデン王国カロリンスカ研究所客員研究員、東北大学講師などを経て現職。研究テーマは、脳機能イメージング、脳機能開発。近著に『元気な脳が君たちの未来をひらく』(くもん出版)。
(勝見 明=構成 市来朋久=撮影)
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