日本は過去20年間にわたって、プライバシーと産業、制度の問題について然るべき議論を積み上げてきませんでした。今回の法改正を巡っては、これまで見られなかったような素晴らしいスピードで技術的な検討が進んだ一方で、その過程で突然、「準個人情報」という新しい定義が示され、議事が混乱する場面もありました。これは現在までの議論が未成熟である証左です。

日本人がどんな存在であり、どのような遺伝子構造の特徴を持ち、何を日々考え、情報を摂取しているのか。そうしたデータは国家資産そのものです。成長産業のひとつにビッグデータ産業を据えると決めているのであれば、まさに産業と国民一人ひとりに関する情報のあり方を見直すことが大事なのではないでしょうか。

まず必要なことは日本における個人情報保護のあり方を、世界標準であるOECD(経済協力開発機構)の「プライバシーガイドライン」(※2)に則した形で整えることです。そのうえで、アメリカやEUに比肩する情報流通のルール作りを行うことが求められます。

成長産業の育成は重要ですが、プライバシーを守ることは社会からの要請です。双方のバランスを取りながら、世界標準と互換性のある法改正によって、新しく相応しいルールを作り、厳守できる体制を目指すべきです。

※1:大綱では「基本的な考え方」として「第三者機関の体制整備等による実効性ある制度執行の確保」、「制度設計」として「第三者機関の体制整備等による実効性ある制度執行の確保」が明記されている。
※2:OECDは1980年に『プライバシー保護と個人データの国際流通についての勧告』を採択。このなかでは「収集制限の原則」(個人データは、適法・公正な手段により、かつ情報主体に通知または同意を得て収集されるべきである)など8つの原則が提唱された。

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