社員はガラス張りなのに、役員はブラックボックス
日産自動車の2013年度決算の有価証券報告書によると、役員報酬の内訳は「金銭報酬」と「株価連動型インセンティブ受領権」に分かれる。肝心の決定方法についてはわずかに数行の記載しかない。
「取締役会議長が、各取締役の報酬について定めた契約、業績、第三者による役員に関する報酬のベンチマーク結果を参考に、代表取締役と協議の上、決定する」
ゴーン社長の報酬の9億9500万円は「金銭報酬」のみであるが、金銭報酬の決め方については「企業報酬のコンサルタント、タワーズワトソン社による大手の多国籍企業の役員報酬のベンチマーク結果を参考に、個々の役員の会社業績に対する貢献により、それぞれの役員報酬が決定される」と書いてあるだけだ。
タワーズワトソンといえば、人事・報酬コンサルティング会社として各企業の課長、部長クラス以上の報酬データを保有する。要するに、日産としては「ライバル他社の社長や役員が報酬をこれだけもらっているから、当社の役員もこの金額に決めました」と言っているにすぎない。
内閣府令が求める報酬額の算定方法の開示をとても満たしているとはいえない。しかも他社のベンチマークを参考に最終的には「代表取締役と協議の上、決定する」とあるが、代表取締役はゴーン社長を含めて4人。これでは“お手盛り”の報酬と言われてもしかたがないのではないか。
さすがに6月24日の株主総会でも「高すぎるのではないか」という質問が飛んでいる。これに対しゴーン社長は「グローバルな企業に比べれば決して高くない」「報酬がある程度高くないと人材が流出してしまう」と答えたと報じられている。まるで中小企業の社員が大企業の社員に「どうしてお前の会社はそんなに給与が高いんだ」と問われて「そんなことはないよ、大手ならこのくらいもらっているよ」と答える構図となんら変わらない。聞く側に妬みや嫉妬を抱かせるだけの効果しかないだろう。
だからこそ誰もが納得できる基準をつくり、開示すべきなのである。
じつは日産自動車に限らず報酬額決定の基準や具体的な計算式まで開示している日本企業は少ない。