役員報酬の算出は人事部の管轄外だった!
かつての役員報酬は固定報酬と退職慰労金だけであったが、外国人株主などの投資家からがんばってもがんばらなくても同じ報酬というのはおかしいという声が高まり、今ではほとんどの企業が退職慰労金を廃止している。
さらに固定報酬の一部を業績連動型報酬に移行する企業も増えるなど、それなりに改革も進んでいる。しかし、それでも固定報酬の割合が大きく、業績連動報酬の割合はせいぜい2~3割にとどまる企業が多い。
欧米企業は固定報酬と同額ないし、固定の2倍を業績連動報酬が占めている。2割程度では業績が悪くても良くても差がつかず、インセンティブを高める効果は薄いだろう。
日本企業のなかでも野村ホールディングスは固定報酬と業績連動報酬(変動報酬)の決定基準を開示しているところもあれば、資生堂のように固定40%、業績連動60%と報酬比率を開示している企業もある。
しかし、社員のように算定基準や計算式まで開示しているところは極めて少ないのが実状だ。ましてや日産自動車は固定報酬と業績連動の内訳すらも開示していない。
以前、大手サービス業の人事担当役員に設計段階の役員報酬制度の中身を見せてもらったことがある。
各部門の業績目標の達成率と全社の業績を加味した計算式であった。これは開示するのかと聞くと
「制度の設計書でも役員の異論が相次ぐほどの騒ぎになりました。仮に決定してもとても公開することはできない。また、役員の報酬は一般的に秘書室や役員室、つまり経営トップが仕切っており、人事部の管轄外なのです」
と言われた。
つまり、社員の報酬の算定基準は公開しても、役員についてはトップを含めた役員自身が拒んでいるのだ。これでは筋が通らないだろう。
なぜ、報酬基準の開示が必要なのか。
金額よりもむしろ投資家にとっては経営者が何を重視して経営しているかという重要な情報であるからだ。つまり、経営者自身がどんな目標を設定し、どれだけ達成したのかを知る指標になる。その結果として報酬額が下がれば経営者としての手腕が問われることになる。
大手企業では若手の抜擢を促すために、たとえば2期連続で人事評価が低い管理職を降格させるところが増えている。ましてや会社の行く末を左右する経営者・役員も同じように評価が低ければ退陣してもらうのは当然だろう。