楽天・三木谷社長も太鼓判

私もスタートアップの面白さを求めて、イノーバに参加した一人でした。宗像さんと出会ったのは、経営学者の石倉洋子先生が主宰していた少人数のセミナー。お互い参加者だったことから連絡を取り合うようになったんです。その頃、彼はまだ事業は決めていなかたったけれど、起業すると言っていました。

以来、ときどき会っては彼の考えるビジネスプランの壁打ち相手になっていました。当初、彼はコンテンツマーケティングではなくECに興味を持っていて、私は楽天で営業から企画、コンサルティングまでやってきたので、力になれると考えたんですね。しばらくして彼から今のビジネスモデルの話を聞き、本格的に一緒にやりたいと心を決めたんです。

これは宗像さんも同じだと思うけれど、こうしたベンチャー企業で働いていく上で、楽天という企業で身につけた手法や価値観は、いまも本当に大切なものとして体に染みついていると感じています。

私が楽天に転職したのは、NOVAで5年程働いてエリアマネージャーとなった後のことでした。当時のNOVAは何と言うか目茶苦茶で、1年間で半分くらいの人が辞めちゃう程の過酷さでした。私も一時期はエレベーターに乗ると、頭にストレスで禿ができていないか確認していたくらい。でも、一方で仲間と一緒に成果を出せば評価がどんどん上がるので、私にはそれがゲームみたいで面白くて仕方なかったんです。

それがある程度まで出世して会社も大きくなると、今度は放っておいても成果を上げられる仕組みができてくる。それでつまらなくなってしまったのが転職の理由でした。

私が入ったころの楽天はまだ社員が300名くらいで、いまのような巨大企業に成長していく直前の段階でした。楽天市場の新規出店の営業のために電話をかけると、「何? 天ぷら屋?」なんて言われ、「天ぷらは売ってないんですけどねえ」とお愛想で笑ってから話をするような感じだったなあ……。

楽天でも猛烈に働きましたね。いちばん嬉しかったのは、「レディースボードメンバー」5人のうちの1人に選ばれたこと。当時の楽天は、将来、役員となって活躍できる女性の育成に力を入れていました。社長の三木谷(浩史)さんから直接選ばれたので、ますます仕事に力が入りましたね。

ただ、楽天は私の成長よりもずっと速いスピードで成長していきました。その過程にどっぷり浸かってみて思うのは、「アマゾンを5年で抜く」と言えば「それじゃ遅すぎる!」と返ってくるような三木谷さんのスピード感や仕事のマネジメント手法に秘密があったということですね。