合併相手をトップに就任させた理由
わがディズニーはどのようにしてこのようなフラットな組織へと改革できたのか、2つ目のポイントをお話ししていきましょう。
8年前に、私たちはピクサーと合併し、ピクサー側のジョン・ラセターがチーフ・クリエーティブ・オフィサー、エド・キャットマルがスタジオ社長に就任しました。この点だけを見ても、ディズニーとピクサーの間にライバル関係がない、そして本質的にディズニーに謙虚な体質があることがおわかりいただけるでしょう。かつてはディズニー伝統の「ゴング・ショー」なるものがあり、誰かがアイデアを提案するとそれに「イエス」か「ノー」かだけで答え、それでおしまいでした。組織改編後は、「ストーリー・トラスト」で約20人の監督・脚本家・ストーリーのヘッドなどが意見を交わしあい、手直しをするようになりました。そんな様々な角度からの意見を集約することにより、作品の完成度がさらに高められるようになったのです。その積み重ねで実績が出るようになり、誰もトップダウンシステムに戻ろうという意識すらなくなっていきました。
もちろん、ディズニーには約800人の人間がいるわけで、単に経営サイドと制作サイドだけでなく、あらゆる次元で衝突が発生します。大切なことは、衝突そのものが当たり前だと受け入れること、そのうえであらゆる方面の意見に耳を傾けるということです。それぞれの意見には何がしかの聞く価値があるはずですから、すべての人・意見を尊重して集団の決定に反映することにより素晴らしい作品・結果が生まれていくのです。
では、新しいアイデアを生み出すためにどのような習慣があるのか。これを3つ目のポイントにあげましょう。
私が常々心がけているのは、できるだけ違う考え方を受け入れること、そしてきちんと休養をとることです。きちんと休みをとることにより、さらにエネルギーもわき、きちんと運動をして人生全体のバランスを保つことで新しい価値観を受け入れ、創造力が高まるように思います。そして1日で特に重要なのが早朝です。物静かな時間に考えることで思考が広がるようになるのです。