ダメ出し文化が自信のない子を育てた

繰り返しになりますが、まず自己肯定感が育ってはじめて、しつけやルール、規範を守ることができ、そして学力が伸びるのです。この順番を間違えてはいけません。

自己肯定感をほったらかしにして、しつけやルールばかりに固執して子供を叱っていないでしょうか。そうすると子供は攻撃的になって、ますますしつけやルールは身につきません。約束事やルールが守れないことでまた親から叱られるので、さらに自己肯定感が下がる、という悪循環に陥ります。そういう場合は、いったん勉強やしつけは横において、もう一度、自己肯定感をしっかりと育て直すことが大切です。

しつけやルールは「やっていいこと」は○=これができる子はいい子で、「やってはいけないこと」は×=これができない子は悪い子、といった世界で、白黒がはっきりしています。けれども自己肯定感は“○でも×でもいい”のです。

「たとえ勉強ができなくても、あなたのことは大好きだよ」と、親が子供を受け入れてやるのです。「もちろん、いい子になってほしいけれど、たとえ非行に走っても、おまえはお父さんとお母さんの子供だ。見捨てないよ」。こうした気持ちに接することで育まれるのが自己肯定感です。そしてこの自己肯定感を育てられるのは家族しかいません。

日本の子供たちの自己評価の低さは世界の中でも突出しています。2011年に発表された「高校生の心と体の健康に関する調査」(日本青少年研究所)によると、「自分は価値のある人間だと思う」と答えた子供の割合がアメリカは89.1%、中国は87.7%なのに対し、日本は36.1%とひときわ低い数値。実に6割以上もの子供が、自分は価値のない人間だと思っています。

なぜ日本の子供は自己肯定感が低いのか。その背景にはできないところばかりを指摘する“ダメ出し文化”があると考えられます。欠点を直させようとする傾向があるため、すぐに欠点を克服できる子であればいいのですが、なかなかできない子は、ずっと叱られ続けることになります。何をするにも周りと比べたり、相手の顔色をうかがったりして、自己肯定感がどんどん失われていくのです。「褒めてばかりいると子供がやわになる」「子供は叱らないとつけあがる」ということを言う人がいますが、こういった人は日本の子供たちが、こんなに自己肯定感が低いという現状を知らないのではないでしょうか。また、その重大さの意味もわからないのではないかと思います。

子供たちはつけあがっているのではなく、自信がないのです。だから親や先生、教育に携わる大人は、もっともっと子供たちを褒めて、自己肯定感を育てる努力をしなくてはいけないし、「よくても悪くてもOKだよ」「そのままでいいんだよ」というメッセージを出し続けなくてはいけません。