叱る前に考えてみましょう

我々は子供の幸せを願って子育てをしていますが、では子供の幸せとは何なのでしょうか。それは“自分は生きている価値がある、必要とされている”、そういった気持ち=「自己肯定感」を持つことです。

子育てで何を育てるのか。よくいわれるのは、しつけや学力ですが、実はその土台となるのが自己肯定感です。自己肯定感のある子供は困難に直面しても意欲的になれるし、人に対して思いやりや信頼感を持てます。自分が大切にされた経験があれば、人にも優しくなれる。反対に人に優しくなれない子供は、自分が大事にされた経験がないのです。

この自己肯定感を育てるために重要な役割を果たしているのが“甘え”です。甘えとは、平たくいうと相手の愛情を求めること。甘えが満たされると自分は愛されていると感じ、「自分は大切な人間」「自分は自分でいいんだ」といった気持ちが芽生え、自分にも、相手に対しても信頼感が生まれます。

「甘やかしてはいけない」「甘えるな」など、甘えは否定的な意味で使われることが多いですが、甘えは人間の成長にとってなくてはならないものです。甘えさせてもらえなかったり、うまく甘えることができなかったりして甘えが満たされない場合は、満たしてくれない相手に怒りが生まれます。そして自分は甘えさせてもらえるだけの価値のない人間だと思い込みます。それが周囲への不信感や怒りにつながり、自己肯定感はどんどん低くなります。人間関係が希薄になり、攻撃的になったり、あるいは被害者意識を持ったりしやすくなるのです。

いじめの加害者の中心人物は、虐待されたり放置されたり、どこかで被害を受けているというケースが多い。これは甘えが満ち足りていないということが根底にあるのです。また、アルコール依存症や薬物依存症、携帯電話依存症など、依存症になりやすい人も、幼少期の甘えが十分でないことの表れです。