一方で中堅中高一貫校のように、特待生制度を戦略的に活用している大学もある。「学校のブランド力をアップする目的で、『特待生枠』的なものを設けているところは少なくありません」と言うのは、大学ジャーナリストの石渡嶺司氏だ。

たとえば、共愛学園前橋国際大学の「資格特待生制度」もその1つ。同大学では、実用英語技能検定2級やTOEIC500点以上などの英語力、あるいは日商簿記検定2級や情報処理技術者などの資格を持つ新入生は、初年度の授業料、約61万円が免除される。「かつては4年分の学費が免除されていたのですが、受験生が増えた結果、1年に短縮されたようです」(石渡氏)

かつて同大学は、定員割れの危機に悩む典型的な地方私立大学だった。だが資格特待生制度を導入してからというもの、勉強に対する学生の姿勢が一変。ほかの大学改革ともあわせ、今では地元国公立大学の併願校として、群馬県内の文系私立大で最も偏差値の高い人気校となった。

実用英検2級というと『高卒程度』とよくいわれますが、私の感覚では、難関大を除けば、今の日本の大学生の英語力は3級どころか4級も怪しい。その現実を踏まえ、勉強する気のある学生は歓迎する姿勢を特待生制度という形で示したところが、同大学の英断といえると思います」(石渡氏)。その後、新潟の長岡大学や新潟経営大学など、同大学と同様の資格特待生制度を導入する例が次々と出てきている。

流通経済大学の「奨学生選抜入試」も興味深い。合格者には年額72万円が4年間給付されるほか、この枠の学生のための特別講座が用意されている(「キャリア特講」および「グローバルコミュニケーション特講」を2年間にわたって受講。単位認定あり)。「ほかの学生の模範になるような人材の育成プログラムと、経済的援助がセットになっているわけです。大学における特進クラスの一番進んだ形といえるでしょう」(石渡氏)

神奈川大学が1933年から実施している「給費生試験」も、特待生枠型の入試といえる。合格者には入学金・委託徴収金を除く初年度納入金を免除、さらに文系学部では年100万円、理工系学部では年120万円が4年間にわたって支給される。

教員志望の受験生なら、東京学芸大学の「教職特待生制度」はぜひ検討したい。入学料と4年間の学費、寮費の免除。さらに年40万円の教職奨学金が貸与され、卒業後に正規教員として4年間働けば返還を免除される。教員をめざす強い意志があること、世帯年収がおおむね300万円以下であることなどが条件だ。

特待生制度は奨学金以上に情報収集が大変と指摘するのは石渡氏だ。「日本学生支援機構の公式サイトの『各大学の奨学金制度』のコーナーにも、資格特待生を含む特待生制度は記載されていない場合があります。志望大学のサイトで、奨学金以外にも入試情報や各種経済サポートの項目までチェックしたり、学生課に電話で問い合わせるなど、受験する側から積極的に動く必要があるでしょう」