【田原】ところで、どうして子会社でやっているんですか。

【岡崎】お客さんはだいたい僕と同世代なので、歴史ある会社よりも、若い社長がやっている新しい会社のほうが、イノベーションということで共感性を得られるんじゃないかと。僕自身、親会社の取締役をやるより、子会社の社長をしていたほうが経営リテラシーも上がるという狙いもあります。

【田原】プロの経営者になりたいと言っていたけど、分野を問わずに事業を広げていくことは考えていますか。

【岡崎】いまはもう、ないです。好きではない分野での事業の立て直しも経験しましたが、やっぱり僕は家がすごく好き。これからもみんなの住環境をよくする仕事をしていくと思います。

【田原】わかりました。ぜひ頑張ってください。

田原総一朗が見た岡崎富夢の素顔

岡崎さんが役員を務めていた建材会社は、リーマンショクの直撃を受けて赤字転落ギリギリになった。自分にかかっていた保険金で黒字にしようと考えるところまで追い詰められたというから、相当なピンチだ。しかし、土俵際に追い詰められたからこそ、木造住宅用の屋上庭園のアイデアが生まれて、そこにすべてを懸けることができた。昔から「危機こそチャンス」という言葉があるが、岡崎さんはそれを見事に体現した人物だと思う。

岡崎さんの『僕は住宅業界のiPhoneをつくりたい』という夢も印象に残った。若い力がそれぞれの業界でiPhoneを目指せば、日本はもっとおもしろくなるのではないだろうか。

岡崎さんが次にどのようなイノベーションで世間を驚かせてくれるのか、非常に楽しみにしている。

innovation社長 岡崎富夢
1977年、山口県下関市生まれ。99年下関市立大学経済学部卒業、同年東邦レオ入社。2003年東京支社東京戦略室室長、07年建築関連事業部事業副部長、09年取締役事業本部長などを経て、10年木造用屋上庭園「プラスワンリビング」事業を立ち上げ、12年から現職。同年から屋上庭園付き規格住宅「プラスワンリビングハウス」を販売。
田原総一朗
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経てフリーに。活字と放送の両メディアで評論活動を続けている。『塀の上を走れ』『人を惹きつける新しいリーダーの条件』など著書多数。
(村上敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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