海外には成功例がある。ソフトバンクが出資している世界最大のECサイト「淘宝(タオバオ)」だ。タオバオは出店手数料とロイヤルティのいずれも無料で、広告収入で稼ぐビジネスモデル。会員数は約5億人、出店数は700万店以上。12年の流通総額は1兆元(約15兆円)で、米アマゾンを上回る世界最大のモールサイトである。
つまりヤフーの「無料化」の狙いは、楽天市場などと正面からぶつかることではなく、日本のEC市場そのものを拡大させながら、タオバオのようなビジネスモデルを確立させるというものだ。
ヤフーのショッピング事業は、「無料化」の発表以後、エンジニアを5倍に増やすなど、人材と予算の集中投下を進めているという。
「これまでは負けグセがついていた。リソースも小さかったし、会社全体で勝ちにいこうとは思っていなかった。しかし、もう人がいないとか、お金が使えないとかの言い訳はできない。成長に向けて驀進(ばくしん)させていきたい」(小澤)
一方で、EC市場には危うい面もある。昨年11月、「楽天市場」では、東北楽天ゴールデンイーグルスの日本一を記念したセールで不当な二重価格表示が発覚した。その後、ヤフーショッピングでも、不当表示と見られる例が複数みつかり、ネット通販全体への信頼が揺らいでいる。
今後、出店数と商品数が激増するヤフーにとって、店舗による不正行為の監視・排除の負担は増す。モールサイトでは、全国各地に散らばる数万もの出店者が、自由に価格を設定して商品を販売する。自由な場であるほど、すべての商品表示をチェックすることは難しくなる。小澤はいう。
「不当表示などを100%防ぐことは無理だ。だが我々にはオークションサイトのノウハウがある。『ヤフオク!』では購入者が詐欺などにあう事故率は0.0023%。この仕組みを活かすことで、信頼感を確保したい」