対照的に費用を想定することが難しいのが在宅介護だ。例えば、要介護4以上(排泄・入浴・衣服の着脱などに全面的な介助が必要)や目の離せない認知症になった場合、保険適用の上限を超えるケースも多いと畠中氏は言う。
「サービスの利用には時間的な制約が多く、保険対象外のサービスを使う機会が増えます。月に20万円以上の上乗せが出ることも」
在宅介護の場合、家族の負担が大きいことも忘れてはならない。親が遠方に暮らすなら、交通費も膨大になる。会社を辞めて介護に専念する人も多いが、それは自分の老後資金を削る行為に等しい。
とはいえ、施設に預けることにしても、親の貯蓄や年金では足りない場合、どうしたらいいか。畠中氏がすすめるのは、自宅を売却もしくは賃貸に出すことだ。
「住みかえ支援機構に借り上げてもらう方法も。賃料は相場よりやや低めですが、借り手がつかなくても収入が入ってきます。親の年金が満額支給され始めてから1年経った頃に、老後について親子で話し合うことが大切です」
年金支給から1年経てば、年金生活の収支が明らかになる。親がその年齢を超えているなら、すぐに相談の場を設けよう。
ファイナンシャル・プランナー、生活経済ジャーナリスト。『お金のきほん』『高齢化するひきこもりのサバイバルライフプラン』など著書多数。
小黒一正
一橋大学経済研究所世代間問題研究機構准教授。大蔵省(現財務省)入省後、財務総合政策研究所主任研究官などを経て2010年より現職。著書に『2020年、日本が破綻する日』など。