逆にやってはいけないのが、私の意見を受け入れてくれないのはおかしいという思いを言葉や態度に少しでも表すことです。トップがぶれていることを幹部は見抜きます。さらに社員全員が幹部を見ています。決定を真摯に受け止めて、組織の中に落とし込んでしっかりとコミットメントを示すのがリーダーの役割です。

最近、どうすれば日本人はグローバルに活躍できるのかと聞かれます。私は日本人の基礎的能力は高く、活躍できる資質を十分に持っていると思います。大事なのは本気で海外で勝負するぞという気持ちがあるかどうかです。退路を断ち、現地に骨を埋めるぐらいの覚悟を持てば、自ずと行動が変わり、力を発揮できます。

これは企業も同じです。「海外に出ていかざるをえない」という消極的な認識しか持たない経営者もいます。グローバル競争に打ち勝つには日本企業であり続けることを守りながら世界で勝つやり方とグローバル企業として世界で勝つという2つの選択肢しかありません。海外の人材活用を含めたダイバーシティを活用し、グローバル企業として世界に勝ちたいと本当に思っているのであれば、日本企業であることを捨てないと無理です。

しかし、実際はグローバル企業になりたいが、日本企業であることを捨てきれない。P&Gもアメリカ企業として20年前はそうしたジレンマを抱えていました。でも大きく舵を切ってグローバル企業に脱皮しました。今、日本企業もそんな選択を迫られる時期に差しかかっているのではないかと思います。

P&Gシニアエグゼクティブオフィサー兼プレジデント-アジア 桐山一憲
1962年、大阪府生まれ。明星高校、同志社大学商学部卒。85年P&Gファー・イースト・インク(現P&Gジャパン)入社。2002年、営業統括本部長、06年ヴァイスプレジデントを経て、07年9月~12年6月P&Gジャパン社長。12年7月より現職。
(溝上憲文=構成 尾崎三朗=撮影)
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