世界に通用する教養や語学を身につけさせ、親子ともども世界的な富裕層・指導者層のネットワークに入り込んでいく。これが子供を留学させる狙いである。
しかし、超富裕層の最大の関心事は一族や家業の継続だ。早いうちから子供を外国へ出してしまうと、日本人としての習慣が身につかず、家庭教育も十分には施せないというおそれがある。悩ましいところだが、小林氏によれば、確固たる解決法は見つかっていないという。
「事業の中身は時代にあわせて変えなければいけないとしても、何代にもわたって守り続けてきた伝統的な価値観は継承しなければならない。人としてどう振る舞うか、ビジネスでは何に気をつけるのか、といったことです。これについては、家庭で教えるしかないというのが実情です」
伝統的な資産家は大家族主義であり、祖父母と同居し親戚縁者も近くに住んでいる。一般には「お祖父さんやお祖母さんが孫のしつけに当たる」(小林氏)という。
「ただ、それがどこの家でも機能しているわけではない。大王製紙前会長のスキャンダルで注目されたように、有名企業の御曹司が多額のお金をギャンブルに使っているような例はありますからね」
一方、ルート・アンド・パートナーズ代表取締役の増渕達也氏の見方はシビアである。
「日本経済は敗戦でいったんご破算になり、そこから再出発したという経緯があるので、超富裕層といっても二代か三代しか継続していないことが多いんです。だから、教育を通じて一族の繁栄を図るという仕組みが確立していないというところはありますね。私はこれから100年くらいかけて、賢く変わっていくと思っています」