【福原】私は採用にも問題があると思います。企業は、上の意見に服従してくれる人のほうが都合がいい。だから「答えはいくつもある」なんて難しいことを言う人より、自分たちのカルチャーに染められるように、「とにかく頑張ります」と言う人を積極的に採ってきました。

【田原】日本企業が新卒一括採用しているのも、そこですね。大学を出たての人なら何の色にも染まっていないから、新卒を取る。こんな国、ほかにないですよ。

【福原】外資は逆に新卒を敬遠します。というのも、経験のある人なら自分の考えがあって、会社をいい方向に動かしてくれるだろうという発想で採用するから。日本とはまったく違います。

【田原】アベノミクスの産業競争力会議で、社外取締役について議論されました。日本企業では、上司に逆らっちゃいけません。1番上は社長ですが、誰も社長に逆らえないから企業も発展できない。そこで社外取締役を半分以上にするルールをつくり、社長にノーと言えるようにしようとした。でも、経団連の人たちが反対して、結局は否決されました。これじゃ日本の企業は息苦しいままです。

【福原】正直言って、この問題を短期的に解決することは難しいと思います。時間はかかるかもしれませんが、教育から変えていくしかありません。小中学校のときから「答えはいくつもある」という教育をしていって、彼らが社会に出たときに化学反応が起きれば、新しい日本というものが見えてくるはずです。日本はベースの教育はいいのだから、うまく組み合わせれば、ふたたび世界に羽ばたけるのではないかと思います。

福原正大
1970年、東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)、バークレイズ・グローバル・インベスターズを経て、2010年、グローバルリーダーを育成するInstitution for a Global Society(IGS)設立。近著に『ハーバード、オックスフォード…世界のトップスクールが実践する考える力の磨き方』。
田原総一朗
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経てフリーに。活字と放送の両メディアで評論活動を続けている。『塀の上を走れ』『人を惹きつける新しいリーダーの条件』など著書多数。
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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