必要な老後資金の額は家庭によって違うが、「65歳時点で2000万円」が1つの目安と考える。年金生活に入った後、もし毎月5万円(年間60万円)を取り崩したとすると、20年では1200万円。2000万円の老後資金があれば、まだ800万円の余裕がある。

65歳時点で必要な老後資金が不足しそうなら、60歳以降に貯金を続けることも必要になる。本当の老後は年金生活に入ってから。それまでは、まだ準備段階が続いていると考えたほうがよさそうだ。

収入が減ってもちゃんと暮らせる

収入も支出も縮小する定年後の生活で足かせとなるのが住宅ローン。70歳以降も続くような長期ローンを抱えている人は少なくない。年金生活でローンを返済するのは厳しいので、遅くても65歳までに完済できるよう、期間短縮型の繰り上げ返済を行ったほうがいい。

もう1つの大きな問題は「子ども」。親が40歳近くになってから生まれた子がいると、定年退職後も教育費が続くことになる。それは最初からわかっているはずなので、なるべく早い段階から教育資金と老後資金の計画を進めよう。

さらに、最近は大学院に進学したり、卒業後に専門学校に通うケースも増えている。いつまで経っても教育費が終わらないようでは、老後資金の準備ができない。「親が教育費を払うのは大学卒業まで」と決めて、それ以上は本人が奨学金を借りるように言い渡したほうが親のためにも本人のためにもいい。

年金制度問題や財政問題などが報道され、老後への不安を感じる人はますます増えているようだ。だが、まだ起きてもいないことを心配しすぎてもしかたがない。また、収入が減り、貯蓄残高が減っていけば、それに応じて生活を工夫する力をたいていの人は持っている。

老後の準備は今できるところから、少しずつでも確実に進めていくことが大切だ。

現役時代にやっておくこと5カ条

1.老後の収入と支出の見通しを立てる
2.教育費の少ない時期に集中的に資金を貯める
3.65歳までに完済するよう住宅ローンを繰り上げ返済
4.無事に再就職するための準備と根回し
5.子どもの独立を促す

ファイナンシャル・プランナー、生活設計塾クルー取締役 
浅田里花

独立系FPとして資産設計、リタイア後の生活設計などのアドバイスを行うほか、マスコミへの寄稿、セミナー講師などの活動も行っている。
(構成=有山典子)
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