一時払い終身保険とは死亡時に死亡保険金が支払われる保険だが、最近は中途解約を前提とした貯蓄商品として販売されるケースが多い。10年程度たてば元本割れはしないが、10年以上確実においておけるとしても、普通に個人向け国債などを買ったほうがいいだろう。

多少、効率が悪くてもいいというなら止めはしないが、保険会社が破綻すれば元本割れする危険も伴うことを覚えておきたい。これは過去実際に何度か起きていること。国の年金があてにならないと思いながら、民間の保険会社の信用リスクを意識しないのは不合理だ。国が破綻するリスクより、個別の保険会社が倒産するリスクのほうがはるかに高いのは自明のことである。「保険で貯蓄」という過去のイメージは早々に捨て去るべきだろう。

個人年金保険の銀行窓販が解禁された02年から09年度まで、国民生活センターには約1400件の相談案件が寄せられている。同センターの報告によれば、銀行が「預金や国債より利率が高い、投資信託より安全」といったセールストークで個人年金保険を勧めたり、リスクがきちんと説明されていないなどの実態がうかがえるという。

長期間保有することで元本割れが避けられるとしても、思わぬ支出増、収入ダウンなどで中途解約せざるをえない可能性は誰にでもあり、元本割れのリスクが伴うことは認識すべきである。十分な説明が求められるのは言うまでもないが、「保険なら安心」と信じ込んでいないか、消費者の側も「隠れたリスク」に十分な注意を払いたい。

ここ数年は何度も経済危機があり、投資で収益を得るのは難しい状況だ。自衛のためにも、合理的な金融商品を選ぶ基礎的な知識や家計のコントロール術も身につけておきたい。

(構成=高橋晴美)
関連記事
株で勝てる人と負ける人はどこが違うか
「3割が貯蓄ゼロ」の時代に貯金を増やす法則
サラリーマンが60までに1億つくる法
日本国債暴落の日は、間近に迫っているか?
年金を払い続けるのと、自分で運用するのは、どっちがお得か