実際にできるかどうかは会社によって異なるが、制度上、12年からは従業員が自身の給与から掛け金を出すことも可能となった。その際、思い出してほしいのが、「教育費など、ほかの支出とのバランスを考えながら老後資金を準備する」という点だ。
結婚、住宅購入、子育てなど、現役世代には老後より先にまとまったお金が必要になる場面が多いが、確定拠出年金で積み立てたお金は原則的に60歳まで引き出しができない。他の資金がショートすることのないよう、拠出するかどうかや拠出額を決めることが大切だ。
いつでも使えるようにしておきたい場合や、勤務先が確定拠出年金を導入していない人は、ネット展開している証券会社や銀行でできる、投資信託の積立購入を検討してもいいだろう。家計に余裕がない時期には積み立てを休む、余裕がある時期は積立額を増やすなど、臨機応変に資産形成ができる。
退職金を狙う「一時払い保険」の罠
定年を迎えて退職金を受け取る際はもちろんだが、転職で元の会社から退職金を受け取ったり、相続などでまとまったお金を手にしたときも、「老後に備えてしっかり運用したい」と考える人が多い。
その場合は、「ネギを背負って金融機関に行かない」ことが肝要である。
ここ数年、銀行は投資信託や保険の販売に力を入れている。預金口座を管理している銀行にとって、退職金など、まとまった額の入金はすぐに察知でき、ダイレクトメールなどを使って資産運用を勧めてくることも少なくない。
コツコツ貯めてきたお金は運用先を決めるのも慎重になるものだが、退職金や相続で得たお金などは、つい「せっかくだから有利に増やしたい」と思いがち。多くの人は無意識のうちに銀行に信頼を寄せているので、銀行に相談することには抵抗を覚えにくい。
しかし、これは銀行にとって「鴨がネギを背負っている」ようなもの。毎月、分配金が受け取れる毎月分配型の投資信託は年金を補完する商品として勧めやすいし、「リスクのあるものは怖い」という人には、「保険なら安心」というロジックで保険商品を勧めてくる。まとまったお金がある人が勧められるのは、保険料を1度に支払う「一時払い個人年金保険」や、「一時払い終身保険」だ。