無理をして若い人や他の世代と交流していかなくてもいい。世代が違うと、活動のスピードやコミュニケーション方法も違うので、「連絡はツイッターで」などと言われてしまうと対応できない人もいるでしょう。同世代の友達を何人か集めて、電話とFAXでやり取りするという関係でもいいじゃないですか。

会社で承認されないと感じたら、心を素早く切り替えることです。もし、同期よりも評価されていないとか、昇進の椅子が回ってこないということが、30代、40代でわかってしまったとき、他の幸せをどこに求めるべきでしょうか。

欧米なら、そこそこの能力があるのに社内で評価されなかった場合、転職して別な会社で承認を求めればいいでしょう。しかし日本の場合、会社の中に長くいないと出世しにくく、中高年の転職はきわめて難しい。こんなとき、真面目な男性ほど、安易に承認を求めて不倫などに走りがちです。しかし、こういった行為で家庭が崩壊してしまえば幸福どころではなくなってしまいます。

ただ、「会社の承認を失ったから、今度は家庭に帰ろう」と、家族にすべてを求めすぎても過重になります。やはり、ほかにかまってくれる、承認してくれる場所があったほうがいい。

要は、会社、家族、趣味のサークルやボランティア組織など、自分を承認してくれる足場をバランスよく持つことです。どんなにモノがあふれていても、人はひとりぼっちで幸せになることはできません。自分自身で選びとり、努力して維持していく「つながり」こそが、今後の新しい幸福の源泉になるでしょう。

そして、余計な嫉妬心や競争心などは脇におき、まず他人を承認することです。他者を承認しない人は、絶対に他者からも承認されません。当たり前のことですが、人を幸せにすることが、すなわち自分自身を幸せにする近道なのです。

中央大学教授 山田昌弘
1957年、東京都生まれ。81年東京大学文学部卒。86年同大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。家族社会学が専門。愛情やお金を切り口に人間関係を社会学的に読み解く試みを行う。著書にベストセラーとなった『希望格差社会』、『幸福の方程式』(共著)、『なぜ若者は保守化するのか』など。
(構成=白河桃子 撮影=澁谷高晴)
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