■ナンバーワン棋士の仮説思考

『決断力』
    羽生善治/角川ONEテーマ21

将棋の勝負に臨んだ際、直感の7割は正しく、必要な情報を得るには「選ぶ」よりも「いかに捨てるか」のほうが重要なのだと著者である将棋の羽生名人は説く。それは十分な情報がないまま、その時点における何らかの仮説を持って物事の全体像を把握しようとする「仮説思考」の考え方と相通じる。将棋もビジネスもシンプル・イズ・ベストなのだ。

■真のリーダーの姿を問う

『エンデュアランス号漂流』
    アルフレッド・ランシング/山本光伸訳/新潮文庫

南極探検隊の船「エンデュアランス号」は、1914年12月に南極近海で座礁。隊長のシャクルトン以下、28名の隊員は船を捨てざるをえなくなる。読みどころは、強い信念と責任感を持ったシャクルトンの優れたリーダーシップ。サブリーダーの人(副隊長と船長)とシャクルトンの関係に着目しながら読むと面白い。

■人間が誤りを犯す方程式

『すぐれた意思決定』
    印南一路/中公文庫

人間が共通して犯しやすい誤りのパターンを明らかにし、どうしたらその罠にはまらず、「すぐれた意思決定」ができるかを徹底的に考察した本である。とくに本書の優れた点は、そうした「人間の誤りの方程式」を数多く紹介していることだ。「すぐれた意思決定」を求められる経営者やリーダーはぜひ本書を紐解くべきだろう。

早稲田大学大学院商学研究科教授 内田和成
東京大学工学部卒業。慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て、1985年ボストンコンサルティンググループ(BCG)入社。2000年6月から04年12月までBCG日本代表を務める。06年より現職。『論点思考』『仮説思考』『異業種競争戦略』など著書多数。
(構成=荻野進介 撮影=加々美義人)
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