※本稿は、中野崇『40代からの脱力トレーニング』(大和書房)の一部を再編集したものです。
なぜ腰のコリは揉んでも治らないのか
脱力トレーニングによって、「力の入れ具合」を適切なバランスに整える。
そのためには、「力を入れるべき部位」と「力を抜くべき部位」が、具体的にどの部位を指すのかを知る必要があります。
力を入れるべき部位と抜くべき部位はある程度決まっていますので、その整理をきっちりとしておきましょう。
図表1をご覧ください。
なお、力を入れるべき部位といっても、力を入れっぱなしというわけではなく、すぐに力を入れられる、すぐに力を入れる反応を起こすことができる、そんな状態をキープすることを意味しています。
力の抜きどころとしてとくに重要な部位は、「腰」です。腰の力みから始まるトラブルは、非常に多いからです。みなさんは凝った腰をマッサージでほぐしても、数日経ったらまたすぐコリが復活した経験はありませんか?
なぜすぐに元に戻るのかというと、腰が緊張する根本的な理由が解決されていないからです。
まず、腰の緊張には「背骨の構造」が影響しています。
背骨の上約3分の2は肋骨とつながっていて、鳥かごのような形状(胸郭)になっています。そのため、この部分は骨格構造的に強固なつくりになっています。
非常に不安定な腰椎
問題は、下約3分の1を支える腰椎です。腰椎は、鳥かご形状ではなく、腰椎一本だけで腰を支える構造になっています。
この構造は、かなり不安定なので、それを補うために腰の筋肉が補助しなければなりません。
だから、いくら腰をほぐしてもまたすぐに戻ってしまうのです。
身体の構造上、腰は緊張しやすく、腰痛を持つ人が多いのは仕方のないことだと言えるでしょう。
しかし、身体にはこの不安定な腰の構造をカバーする仕組みも存在しています。
それが、「インナーユニット」と呼ばれる、横隔膜、腹横筋、骨盤底筋、多裂筋といった筋群の連携によって生み出される「腹圧」です。
腹圧を高めれば、コルセットのように体幹を安定させることができます。
また、腹圧の向上により体幹が安定し、腕や脚を動かす際の土台としての機能が向上します。
つまり、腰などに過剰な緊張を生み出すことなくしなやか、かつ軽やかな動き
ができるメリットが得られるようになるのです。
しかし、多くの人はこの腹圧を適切に使えず、代わりに腰の筋肉を過剰に緊張させて支えようとする傾向があります。
これが、腰の張りや慢性的な緊張につながる原因です。また、意外に思われるかもしれませんが、本書では腰の働きを補助すべき部位として足裏・足趾(足の指)を重視しています。


