今年のプロ野球セ・リーグでは、阪神タイガースが首位を独走している。ライターの広尾晃さんは「浮かれてばかりいられない状況だ。このままいけば阪神は理不尽なポストシーズンを迎える可能性が高い」という――。
お立ち台でポーズをとる阪神の(左から)大山、才木、佐藤輝=2025年7月26日、甲子園
写真=共同通信社
お立ち台でポーズをとる阪神の(左から)大山、才木、佐藤輝=2025年7月26日、甲子園

関西に充満する「今年は安心や」の空気

関西在住の筆者は、このところ周囲の「朝の挨拶」が変わったことに気が付いた。ご近所の商店の親父さんやサラリーマンは口々に「今年は安心や」「もう大丈夫やろう」というのだ。

何が? と聞いてはいけない。聞くまでもなく、言うまでもなく「阪神タイガースは」ということなのだ。

筆者は阪神ファンではないが、多くの関西の街ではそういう人は存在しないことになっているから、かかりつけの医者に行けばいきなり「どや、今年のサトテル(佐藤輝明)は、わしは前からあいつは今年はやりおる、思てたんや」と晴れやかな口調で言われる。

散髪屋に行けば大将が「(藤川)球児(監督)はやっぱり頭がええな。岡田(彰布前監督)が作ったチームを、勝手にいらわんかった(いじらなかった)」など筆者の頭をいじりながら言うのだ。

多くの阪神ファンは、もはや勝った気になっている。

阪神ファンはすぐに有頂天になることでも知られる。オールスター直前の敵地東京ドームでの巨人戦に連勝すると三塁側の阪神応援席から「がんばれがんばれ巨人!」というシュプレヒコールが上がった。

早速翌日は負けたが「これやから阪神ファンは」と思った関西人は多かったのではないか。

セパ格差が生んだ珍現象

しかし、今年の阪神の快進撃は「浮かれてばかりではいけない」状況でもある。

あまりに強いチームが出現すると、リーグ、ペナントレースがおかしいことになるのだ。

【図表1】2025年前半戦終了時点でのセ・リーグの順位

阪神が貯金18、勝率6割超で1位。そして2位のDeNA以下のチームは「負け越し」ているのだ。

1936年にプロ野球が始まって以降、3位のチームが勝率4割台になることは何度もあったが、2位チームが負け越した事例は一度もなかった。

プロ野球というのは、チーム間の戦力差が小さい競技であり、1チームがどんなに勝ちまくっても、リーグの貯金を独り占めすることはあり得なかった。

しかし今季は阪神の圧勝に加えて「ある要因」で、この異常事態になっている。それは「セパ交流戦」だ。

【図表2】セ・リーグの2025年交流戦の戦績

セ・リーグは今年の交流戦で広島が5分の星だっただけで5球団がすべて負け越し。

トータルでは、

セ43勝 パ63勝 2分/セ 勝率.406

という史上最低勝率に終わった。

セがパから負った借金は実に「20」。これが重くのしかかって、セは1位の阪神以外が「借金生活」ということになったのだ。