思考の負のループから抜け出すには何をすればいいか。心療内科医の鈴木裕介さんは「自分に対するネガティブな考えを頭の中で繰り返しジャグリングしているだけの『反芻思考』は、気づきや学びがない損な時間である。そういうときは、『シリアス子ちゃん』という妖精がいて、そいつが悪さをしているという設定にしてしまうといい」という――。

※本稿は、鈴木裕介『「心のHPがゼロになりそう」なときに読む本』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

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写真=iStock.com/FooTToo
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反芻思考は全く建設的な振り返りではない

見えない敵【反芻思考】
「ネガティブ時間」を長引かせる厄介者

本稿では、負のパターンをつくってしまう原因になる、特定の行動・思考パターンを「見えない敵」と名づけ、そのうちの1つである「反芻はんすう思考」を見ていきたいと思います。

自分の欠点や不安、過去の失敗やつらい出来事を、何度も何度も繰り返し頭の中で考え続けてしまうことをいいます。嫌なことがあった時に「くよくよ」「うじうじ」と考えてしまう、あの感じですね。

反芻思考の頻度が高い人ほど、生きづらさは増し、問題解決能力は下がり、睡眠不足やうつが多くなり、幸福度が低くなることが知られています。

反芻思考の厄介な点は、なんとなく「建設的な振り返りをしている」ように勘違いをしてしまうことです。今後の自分に活かすために反省していたつもりが、気がつくと「自分のダメさ」だけに焦点が当たってしまっているのです。

もちろん、反省したり自分を批判的に振り返ること自体は、素晴らしい成長の機会になり得ます。非常にエネルギーが必要なことですが、うまくいかなかった原因や具体的な課題を特定できれば、大きく方向修正することができます。

ただし、反芻と反省はまったくの別物です。自分一人で「なんで私はこんな失敗をするのだろう」という、自己否定的かつ具体性のない問いのスイッチを入れた途端、ネガティブな記憶がどんどん活性化し、ネガティブな感情がどんどん引き出されてきます。

未来に活かすための建設的な反省ではなく「なんで私はこんなにダメなんだ」という自己否定の繰り返しにすり替わってしまうのですね。そうなると、具体的な改善点や的を射た気づきを得ることは、とても難しくなります。

「反芻思考」とは、思考しているようでいて、自分に対するネガティブな考えを頭の中で繰り返しジャグリングしているだけなのです。「反省」とはまったく異なり、学習の役に立たないことが知られています。

深い洞察をすることなく、ただ「自己否定のループ」にはまり込んでいるだけですから、気づきや学びがありません。反芻「思考」とは言うものの、実はほとんど実のあることを考えてはいないのが特徴です。