長崎ちゃんぽん専門店を展開する「リンガーハット」が売り上げを伸ばしている。コロナ禍、原材料費高騰の影響を受けて業績が低迷していたが、2025年2月期の売上高は437億円と、3期連続の前年超えとなった。プラスに転じるきっかけは何だったのか。佐々野諸延(さかえ)社長兼CEOに聞いた――。
リンガーハット代表取締役社長CEOの佐々野諸延(さかえ)氏。大学卒業後にリンガーハットに入社し、営業をはじめあらゆる職種を経験。代表取締役社長就任は2019年より。2020年より代表取締役社長兼CEO
主力のフードコート店舗がアキレス腱に
「業績悪化の最も大きな原因は、ショッピングセンター内のフードコート店舗(以下、SC店舗)に頼りすぎていたことだ」と佐々野氏は自ら分析する。
「SC店舗は自社での出店に比べ少ない投資で済み、さらに売り上げは全体の席数の大体2〜3割ぐらいと、予測がしやすい。商業施設からの引き合いも多かった。コロナ禍前、SC店舗が全体の5割まで増えてきていた」
2018年にはSC店を中心に49店舗を新規出店。これにより2020年2月期の売上高は472億と過去最高になっていた。
しかしそこへコロナ禍が直撃。施設の閉鎖や外食離れにより、リンガーハットにとって採算性が高かったSC店舗は一転、アキレス腱となってしまったのだ。コロナ禍終息後もロードサイド店やビル内店舗に比べ客足の戻りが遅く、業績低下の要因となった。
「週刊誌2冊分」を守りたかったが…
物価高も同社の苦境を長引かせた一因だ。
とくに原材料の中で大きな比重を占め、月間700トンを使用するキャベツの高騰が打撃となった。「一番高いときは相場の4倍にもなり、本当に苦しかった」と佐々野氏は振り返っている。
学生などに、栄養があるものを安く提供するのが創業時からの方針。佐々野氏が入社した42年前のマニュアルには「ちゃんぽんの値段は週刊誌2冊分」と書いてあったという。
しかし、コロナ禍と原材料費の高騰のダブルパンチに勝てず、やむなく値上げに踏み切った。例えば2022年に680円だった主力商品の長崎ちゃんぽんが、以降の価格改定により現在は840円(東京23区の場合。地域によって価格は異なる)となっている。しかしこれが客離れの原因ともなった。
確かに、一頃は「チェーンなのに個人店と同じぐらいの値段なら、個人店へ行く」という声もよく聞いた。


