1日の酒量46グラムの原則
煙草も酒も愛してやまないという人にとって、一体どちらがよりリスキーなのでしょうか。
酒に関わる病気には、いくつかのがん(口腔・咽頭・喉頭・食道・大腸・肝臓・膵臓・乳房)や脳内出血があります。アルコール飲料が粘膜を直接刺激するほかに、体内で代謝されてできるアセトアルデヒドの発がん作用などで、がんを促進することが知られています。
逆に、心筋梗塞、脳梗塞など血管が詰まる循環器病のリスクは、多少飲酒している人が、まったく飲まない人よりも低くなります。アルコールの作用で善玉コレステロールの血中濃度が上がったり、血液が固まりにくくなったりするためです。ただし、習慣的な大量飲酒は、循環器病最大のリスクである高血圧の原因になります。
最近、日本の6つの大規模疫学研究のデータを統合して、飲酒と死亡リスクの関連を検討しました。現在入手可能なものの中では、最も信頼性の高い日本人のエビデンスということになります。
様々な種類の酒がありますが、飲酒量の測定には、アルコール23グラムを単位にします。日本酒なら1合、ビール大瓶1本、ワイングラス2杯、焼酎0.6合、 ウイスキーダブル1杯となります。
さて、男性の結果をみると、飲まない人に比べ、飲酒量が1日当たり46グラムまではリスクが上がらないか、むしろ低いという結果でした。しかし心臓病以外の死因では大量飲酒でリスクが高くなり、最もよく飲む(96グラム以上)グループのリスクはがん1.2倍、脳卒中1.3倍、全死亡が1.1倍でした。これは、年齢や居住地、煙草などほかの要因が結果に影響しない分析結果です。
つまり、飲酒については、1日当たり46グラムというラインを守っていれば、健康な生活習慣を逸脱しないでいられそうです。女性は男性よりも酒の影響を受けやすく、ラインは23グラムでした。