【田原】家出? ずいぶん思い切ったことをしたね。離婚したの?

【太田】離婚はすぐにはできないので、そのときは身寄りのない女性をサポートしてくれる自助団体に駆け込みました。劣等感ばかりを感じる生活をしていたので、ノーマルな精神状態になるまでお世話になっていました。

【田原】当時はそんなに普通の精神状態ではなかったのですか。

【太田】家に閉じこもりきりで、誰にも認められたことがなかったですからね。もちろん家庭内で認められていたり、専業主婦でも社会といろいろな接点を持っている方は大勢いらっしゃると思いますが、私はそうじゃなかった。それで鬱状態になったのだと思います。

【田原】仕事はすぐ見つかったのですか。

【太田】いや、まったくです。就職活動を始めましたが、履歴書を送っても子どもがいるからという理由で、ほぼ全滅でした。面接までいっても、「大学までいったのに、なぜ出産して就職しなかったんだ」とイヤミを言われて、相手にされません。なんとか先輩のつてをたよって法律事務所で時給900円のアルバイトをさせてもらっていたのですが、子どもが熱を出したりして思うように働けず、結局はそこもクビになってしまいました。

【田原】八方ふさがりですね。

【太田】はい。そのときたまたま見つけたのがリクルートの契約社員の求人広告です。どうせここもダメだろうなと諦めながら、履歴書を送りました。するとトントン拍子で進み、面接を受けたら、「あなたはお金もないし、仕事もない。病気の子持ちで、夫も家族もいない。4重苦の女は強いからいい」と逆に評価されて採用されました。