DEレシオとは違う話だが、一定の条件に抵触したときに、融資条件を改めるような場合もある。そのようなケースでは、重要なものに対し、有価証券報告書の注記事項に「財務制限条項」として記載されることがある。たとえば、「契約数が一定の基準を下回った場合には、取締役の派遣や担保資産の処分を行う」といった具合である。

DEレシオが1倍を超えるのは好ましいことではないが、多くの中小企業では1倍を超えているだろう。そのようなときに確認したいのは、減価償却費と最終利益(税引き後当期純利益)を合わせた額が、毎年の有利子負債の支払い元本に足りているかどうか、である。

毎年の支払い元本の半分程度にしか届かないケースが多いのではないだろうか。3分の1にも満たないという企業もあると思う。それでは財務状況は厳しいと言わざるをえない。

そのDEレシオを改善するには、「言うは易し、行うは難し」と思われるかもしれないが、方策は2つの方法がある。負債を削減するか、利益を増加させるか、である。負債を削減すれば分子が小さくなるし、利益を増額すれば分母が大きくなり、その結果としてDEレシオの値は小さくなる。

DEレシオが高いということは、売り上げ規模のわりに器が大きすぎる状態といえる。設備などを確保するための負債が多すぎる、ということである。

そこで本社建物、倉庫などを見直し、負債を減らすことができれば分子は小さくなる。さらに、維持管理にかかるコストを削減することで、利益が上がりやすい体質になり、分母に当たる利益を大きくできる。

実際に旭硝子は既存設備の生産性を引き上げ、投資額を極力抑える対応をとっているという。利益の拡大と負債の圧縮、両面を同時に行うことによって、財務改善を図るという好例といえるだろう。

(構成=高橋晴美 図版作成=ライヴ・アート)
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