今年5月、開発者らに対して、メガネのように装着できるコンピュータ「グーグル・グラス」のテスト端末が配られ始めた。米・シアトルのバーでは「プライバシーの侵害につながる」として、装着が禁止されるなど波紋を呼んでいる。
グーグル・グラスは、米グーグル社が開発したAR(拡張現実)の技術を用いたウェアラブル(装着できる)コンピュータ(以下「WC」)だ。同端末を含むWC市場の規模は2016年までに60億ドル規模になるとブルームバーグは報じている。
今のところグーグル・グラスの価格は1500ドルで、まだ開発者向けの段階だ。API(ソフト開発などに必要なインターフェイス仕様)は4月に公開されたばかりだが、FacebookやTwitter、Evernoteがすでにアプリを発表するなど、いち早く波に乗ろうと企業が躍起になっている。
グーグル・グラスの可能性とは?「ハンズフリーや、遠隔操作が必要な分野での活用が期待できる。視聴者の視点の動きを把握しマーケティングに活かす研究も進むだろう」(伊藤忠テクノソリューションズ 大元隆志氏)。
言語面へのインパクトも大きい。
「ARによって常に日常生活の中にコンピュータの情報を重ね合わせることができる」(大元氏)ため、外国語の情報を入手することが容易になり、母語が違う国で生活することのハードルも下がる。翻訳というビジネスだけでなく、言語の壁が崩れればあらゆる面で世界のフラット化が進む。グーグル・グラスが起こしている熱狂はまだ始まりにすぎない。
(PANA=写真)