並行通貨とは、国内に法定通貨と異なる別の通貨が同時に存在し、流通することである。たとえばカンボジアは、紙幣はドル、硬貨はカンボジアの通貨・リエルが同時に流通するという「並行通貨」となっている。

並行通貨のメリットは、信頼性の高い通貨を貯蓄などに使えば、その実質的な目減りを防げる点だ。また、国内の通貨当局もインフレなどを抑制しやすくなる。

デメリットもある。複数の通貨があるために為替取引費用が発生し、非効率になるということだ。加えて、「“悪貨が良貨を駆逐する”のも問題だ」と一橋大学副学長・小川英治氏は話す。良貨は貯めこまれ、悪貨が支払いに使われるため、流通するのは悪貨のみになるからだ。

預金引き出しのために銀行で列をつくるキプロスの預金者。(写真=PANA)

現在、並行通貨の導入も噂されるのが、3月、キプロス金融危機勃発で日経平均に大きな影響を与えたユーロだ。

「ユーロより安定した通貨が登場すれば、マーケットガバナンスが働いて、ユーロ価値が安定するかもしれない。しかし、それをユーロ圏でできるのはドイツだけだろう」(小川氏)

ドイツのユーロ離脱は今のところ、非現実的だが、キプロスショック以降、キプロスの資本規制は継続中(4月9日現在)で、その意味では、すでに実質的には、ほかのユーロと同じようには使えないキプロス・ユーロという並行通貨が生まれているという見方もできる。一方、フィンランドなど、経済優等生国が、ユーロ離脱のため、並行通貨を探る動きもある。今後も、日本の株価にも大きな影響を与える欧州通貨制度の行方に注視したい。

(PANA=写真)
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