これで食い詰めている状況なら、自分で生きるために動き出すしかないのだが、親は金を持っているし、500円のコンビニ弁当でそれなりに腹が満たせる環境だから、危機感は薄い。かくして30過ぎても親掛かりのパウチっ子が大量増殖したのだ。

中国は国策として「一人っ子政策」を進めてきた。一人っ子政策の先頭を走っているのが今の30代。今後は少子化問題が懸念されるといわれるが、「上に政策あれば下に対策あり」という国だから、現実は農家の戸籍を借りたりしながら2人3人と子供をつくっていたのが実情だ。

しかし、日本の場合は、何もしないのに一人っ子ばかりになってしまった。今や日本の最大の世帯は、「単身者」「シングル」である。かつては20代後半までには結婚して子供を生み、4人家族というのが平均的な家庭だった。だからNHKの料理教室のレシピは4人分だったのだ。今は多すぎるということで2年前から3人分のレシピを紹介している(それでも多すぎる!)。

今は晩婚だから20代から30代にかけてはまだ独身、30代から40代にかけては離婚して1人に、50代、60代以降は定年離婚や熟年離婚、死に別れて1人と、あらゆるセグメントで単身者が一番多い。スーパーやファミリーレストランが苦戦する理由は簡単。ファミリーがいないのである。逆にコンビニやユニクロが流行る理由もこれで説明できる。

少子化という社会現象が日本経済、企業社会に与える影響は思っている以上に大きい。消費を喚起できないのも、企業の活力が落ち込んでいるのも、不景気の一言では片付けられない。少子化をとらえたマーケティングや人事政策を行えば、もっと深掘りできるはずだ。そして政治。少子化によるエネルギー喪失を埋め合わせる方策を、真剣かつ早急に考えて打ち出さなければ、人口構造的にリスクテイカーのいないこの国は(そして企業も、家庭も)どんどん萎んでいくだろう。

(小川 剛=構成)