生命力あふれた二男坊以下の存在

なぜ日本はこうも情けない引き籠もり国家になり果ててしまったのか。考察を重ねると、一つの社会構造の変化にたどりつく。「少子化」である。

終戦直後の昭和20年代、日本の農民人口は全体の50%以上を占めていた。江戸から明治に引き継いだ時代には8割以上が農家で、多くの世帯は子供が5人も6人もいるような大家族だった。しかも家父長制の時代だから、家は長男が継ぐ。すると二男から下は、どこぞで自分で食い扶持を探さなければならない。

戦前に満州や朝鮮半島に勇躍渡った人たちを見ると、二男から下ばかりで、長男はほとんどいない。ハワイやブラジルに渡った移民の人たちもそうだ。

戦後は戦後で、二男以下が職を求めて東京に出てきた。彼らが創業当時の松下(現パナソニック)やソニーやホンダに入って、後に海外に雄飛する戦略の中核を担ったのである。

今時のビジネスマンは海外赴任を打診されると、断る理由を3つも4つも挙げてくる。一番多いのは「長男だから母親の面倒を見なければならない」。二番目が「家内が仕事をしているから」だ。我々の時代なら張り倒されている。

それでも強引に行かせようとすると、「家族崩壊は会社の責任ですからね」「2年で呼び戻してくださいね」など、捨て台詞を残してしぶしぶ(単身)赴任する。しかし気持ちは日本に向いたままだから、現地の言葉を勉強したり、地元のコミュニティに溶け込む努力もしない。中国辺りだと近いから週末ごとに日本に帰ってくる。

昔の日本人ビジネスマンが現地に骨を埋めるような覚悟で海外に飛び出していったのは、やんちゃな二男、三男が多かったから。食うために自分で道を切り開くのは当然と考えていたし、後顧の憂いもあまりなかったからだ。

今は一人っ子の長男が多いから、親を置いてはいけないという気持ちはわかるし、そういう理屈も通りやすい。親としても長男に離れていってほしくないと考える。だから誰も海外に飛び出そうとしない。

内向き、下向き、後ろ向きという日本の引き籠もりの現状を足し合わせて考えると、今の国力低下の元凶は、高齢化よりも少子化によるエネルギー喪失のほうが大きいのではないかと思う。