本当の断捨離はモノを捨てるだけでない

現代は「モノ過剰」の時代です。安く、手軽に、いつでもモノが手に入る。その便利さが、無自覚な「ため込み」を引き起こしているのです。「まあいいか」と取り入れたモノが、「まあいいか」と押し込まれ、積み上がっていく。意識せずに増えたモノは、やがて居住空間を埋め尽くしていくでしょう。

一方で、モノを「出す」行為には意志が必要です。取り入れるのは簡単ですが、手放すには本人の意図と行動が求められるということです。モノのマネジメントに無意識でいると、知らない間にモノがあふれ、空間を圧迫していくのは、当然の帰結なのです。

空間を埋め尽くすモノたちは、ただ場所を取るだけではありません。私たちの思考や感情にも、知らずしらずのうちに悪影響を及ぼしています。散らかった部屋で過ごしていると、イライラが募ったり、仕事の集中力が散漫になったりした覚えはありませんか。部下や取引先への態度にも出てしまっているかもしれません。

近年はイライラを通り越して、ウツウツとした状態に陥る人も増えています。家の中はモノでいっぱい。デスクの上も書類でいっぱい。モノの圧迫感、空間の閉塞感にじわじわと絡め取られ、思考停止に追い込まれている。引きこもりやうつに近い状態になってしまうケースも珍しくありません。

住空間・職場空間は、人間心理に多大な影響を及ぼしますが、多くの人はこの事実に無自覚です。環境が自分に与える影響を理解しなければ、いくらモノを捨てても根本的な変化は起きません。

多くの人が勘違いしているのですが、「断捨離」とは単に「モノを捨てること」ではありません。その本質は、モノとの関係を問い直し、環境と自分自身の関係を再構築する環境行動論というべきものです。環境を自分の味方につけるために、まずは空間の「いま」に意識を向けることが必要なのです。

段ボール箱に物をしまう
写真=iStock.com/LightFieldStudios
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※「断捨離®」はやましたひでこさんの登録商標です。