「不完全さ」こそ愛したい

そんなふうに、人は足りない部分に目がいきやすいですから、どうも自分の「ない」部分を恐れ、毛嫌いしてしまうんですけど、ある本を読んだ時、「ない」に対する考えが変わったんですよ。

アメリカを代表するジャーナリストであるビル・モイヤーズの質問に対して、世界的な神話学者であるジョーゼフ・キャンベルがこう答えているものです。

モイヤーズ 欠点があるからこそ人間を愛せるとおっしゃるのはなぜでしょう。
キャンベル 子供たちが可愛いのは、しょっちゅう転ぶから、それに小さな体に似合わない大きな頭を持ってるからではありませんか。ウォルト・ディズニーはそういうことをすっかり心得たうえであの七人の小人を描いたんじゃないでしょうか。それに、人々が飼っているおかしな小型犬、あれだって、とても不完全だからこそ可愛いんでしょう。
モイヤーズ 完璧な人間なんて、もしいても、退屈な人間だろうと?
キャンベル そうなるほかないでしょう。人間らしくありませんから。人間のへそのように中心的な要素、つまり人間性があってこそ、人間は──超自然的ではなく、不死不滅でもない――人間らしい存在になれるのです。そこが愛すべき点です。(後略)
(『神話の力』ジョーゼフ・キャンベル&ビル・モイヤーズ著、飛田茂雄訳/早川書房刊)

これを読んだ時、ハッとなったんですよ。考えてみれば、人が「愛おしい」と思うものって、たしかにどこか「不完全」なものなんですよね。