「リング」は「太陽の塔」になれるのか
2025年万博の会場中央には「静けさの森」と呼ばれる緑豊かな空間も計画されている。この森はリングの中心点に位置し、約1500本の木々と池が整備される。
空間デザインの担当者は「個性豊かなパビリオンに統一感はないけれど、森がそれらをつなぎとめてハーモニーが生まれる」と語るが、この森もリングと同様に閉幕後は更地に戻される計画である。万博を体験した人たちを結びつける場所であり続けてほしいと保存を訴える声は届いていない。
ある高校生の声によって守られた太陽の塔は、単なる過去の遺産ではない。未来を見つめ私たちに「問い」続ける存在だ。2025年の大阪・関西万博が、この問いに対する現代からの応答となるのだろうか。
リングと静けさの森の撤去計画が、約半世紀前の万博から問われた「伝統と革新、効率と創造性という相反する価値観の調和」についての私たちへの答えなのだろうか。撤去するにせよ保存するにせよ、もう少し議論が必要なのではないだろうか。
太陽の塔が閉幕後に一転して保存が決まったように、議論する時間はまだ十分にあるはずだ。
参考文献(前編に記載がないもの)
「[EXPO人]Vol.5 空間デザイン事務所代表 忽那裕樹さん」大阪読売新聞2024年10月13日朝刊35面
「太陽の塔、愛され50年 有形文化財に 『次は世界遺産だ』」産経新聞2020年03月20日朝刊28面
「[ユメと熱情のころ](52)北大阪急行 会場線 万博行き 思い出の200日」大阪読売新聞2016年06月16日夕刊2面
清水英徳「『太陽の塔』はなぜ残った 大阪万博の謎」
瓦谷登貴子「大阪・太陽の塔、その内部は想像を遥かに超える不思議空間だった! 驚愕の見学レポート」