東京ラーメン・オブ・ザ・イヤーTRY大賞総合1位を4連覇。名実ともに日本のトップに君臨する「飯田商店」。開店15周年にあたり、その歩みを振り返る『本物とは何か』を上梓した店主・飯田将太さんは「たくさんの生産者さんとお客さまの想いをいただいて、それを一杯のラーメンに結んでいく。これには終わりはない。やればやるほどゴールは遠くなるけど、こんなに楽しいことはない」という――。(第1回/全4回)

※本稿は、飯田将太『本物とは何か』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

「飯田商店」の厨房に立つ飯田将太さん
写真撮影=合田昌弘
「飯田商店」の厨房に立つ飯田将太さん。「おいしい」をとことん追求する“闘い”の舞台だ

ラーメン美味求真

僕の「しょうゆラーメン」の、おいしい食べ方をお伝えしたいと思う。

どんぶりが運ばれてきたら、匂いを胸いっぱいに吸い込んでほしい。醤油を芯にした、鼻の奥から脳までを心地よく刺激する、いい香りがするはずだ。

スープの色は美しい琥珀こはく色。澄んでいる。味にもにごりがないから、醤油の風味をストレートに感じられる。醤油はしぼりたての生き揚げ醤油を8種類、蔵から直接仕入れて使っている。

香りをかいで心を穏やかにしたら、れんげを使ってスープをどうぞ。どんぶりの手前から、たっぷりとスープをすくうのがおすすめだ。

手前のスープに浮いているのは比内地鶏などからとった旨み豊かな鶏油チーユだ。そして、その下にあるのが豚のロースのA脂といわれる、豚肉で最高においしい脂身。

最初のひと口のスープに感動を

豚は、霧島高原純粋黒豚、TOKYO X、天城黒豚という銘柄豚のいずれかだ。

飯田将太『本物とは何か』(プレジデント社)
飯田将太『本物とは何か』(プレジデント社)

そのロースを使い、低温調理で10時間かけてゆっくりと火を入れたチャーシューだ。これを、あえて脂が手前にくるように盛り付けてある。つまり、最初のひと口のスープに、そこから溶け出る脂も一緒に楽しめるようにしてあるというわけだ。

醤油が香る芳醇ほうじゅんなスープに、鶏油と豚の脂が合わさる。だから、絶対おいしいに決まっている。これを狙って盛り付けてある。最初のひと口がうまいっ! となれば、あとはずっとおいしくラーメンを楽しめる。

お客さまの中には、鶏油や脂の味が入らない、どんぶりの右上からスープを飲む方もいる。実は僕も同じ。

毎朝、製麺をしたあとに、お客さまにお出しするものと同じ「しょうゆらぁ麺」をつくる。匂いで全体をよく点検してから、まずスープをそこから飲む。でも、お客さまには手前から飲んでいただきたいと思っている。最高においしいはずだから。

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