ドラマで二宮和也が演じる実父に抱いた強い愛着
ところで、ドラマでは二宮和也扮する父はまだ一瞬しか登場していないが、やなせにとって父親は非常に大きな存在だった。
その一方、弟とは何かと比較された。
「色白で眼が大きく、性質は明るく活発で、誰にでも愛された。『お兄さんはお父さん似でおとなしいが、器量が悪い。弟さんはお母さん似でハンサムで快活だ』子供の頃、ぼくはこれに似た言葉を何度となく聞いた」
「あんまりくりかえして不器量だといわれたので、ぼくは暗くてシャイな性格になった。ぬきがたいコンプレックスが強く、これはずーっと大人になるまで続いた」
(いずれも自伝より)
『やなせたかしの生涯』によると、甘えたいときに甘えられず、早くから分別を身に付けてしまったやなせは、それまでの素直で子どもっぽい性格から一転。一歩下がって周りを冷静に見るようになったという。それに対して千尋は甘えん坊でわがままだったが、それがかえって愛されることをやなせはうらやんでもいたようだ。
ちなみに、奥座敷にいた弟は素直に成長し、幼年の頃は多病で小学校も休みがちだったが、中学に入ってからは健康になり、柔道二段になり、やなせが不合格になった高知高校に合格、やがては京大に進学する。
イケメンで京都大学にも合格した実の弟と比較され…
弟と比較される運命は、やなせの後の人格形成や人生に大きな影響を与えた。しかし、それは悪いことばかりではない。自伝では次のように自己分析している。
「ぼくは血液AB型で、器質的に地味と派手が混在していて、時にどうしようもなく派手になってしまったりする。もしも人並以上のハンサムに生まれついたら、この性質では羽目をはずしてしまって人生の軌道を大きく外れたことはまちがいない。神は抑制するために、ぼくの容貌風刺を制限されたと感謝しなくてはいけない。だから、アンパンマン、君はさしてハンサムではないが、優しい性質はぼくからひきついでいるのだ」
弟に対するコンプレックスが、やなせたかしの優しく豊かな人間性、さらには創作活動につながったと言っても過言ではないだろう。
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