発送電分離:分散型エネルギーでビジネスを興す

図を拡大
将来の「電力自由化」のイメージ

電力会社が一体運営している「発電部門」と「送電部門」を分離させるのが、「発送電分離」である。

日本では長い間、電力業界の反発からなかなか進展してこなかったが、震災と原発事故後、日本の電力供給体制の問題点が改めて浮き彫りになり、「発送電分離」の議論が政府内で活発化してきている。

電力改革の基本方針に盛り込まれ、「発送電分離」や「電力小売りの全面自由化」を柱とする「電気事業法」の改正案が、13年4月の通常国会で提出された。

発送電分離によって送配電網が公平に使えるようになれば、発電や電力小売りに多様な企業が新規参入しやすくなり、競争によって電気料金が下がる可能性も出てくる。また地域間で電力の融通がしやすくなり、再生可能エネルギーの普及に一役買うともいわれている。

しかし、日本総研執行役員の井熊均氏は、現状の発送電分離の流れに懐疑的だ。

「発送電分離は世界的に見れば、周回遅れの政策です。欧米では、1990年代~00年代に実施された国があります。そこから生まれるビジネスも知れている。今になって電力業界が発送電分離を受け入れたのも、そんなことをやっても自分たちの地位は揺るがないと思っているからです。電力会社が社内カンパニー制による分社化や持ち株会社方式で部門を分けても、あらゆる事業者に対して中立的な送電会社が実現するとは到底思えません」

新規参入が増えても、97%のシェアを握る既存の電力会社の厚い壁に弾き飛ばされるだけ。

まっとうな競争市場を形成するためには、送電事業の中立性を監視する機関を設けたり、電力会社同士を競わせてシェアを下げさせるような総合的な施策が必要だという。