かつては資本力のある企業や、農業に特別な思い入れがあったり、CSR(企業の社会責任)的な効果を狙う企業が農業に参入してきた。しかし、現在では一事業部門として農業に参入するケースがコンスタントに増えている。
最近の流れでは、大手外食などでは、農業部門として利益が出なくても、客単価がアップするなどバリューチェーン全体の利益に貢献すればいいと考える企業も少なくない。
「大手スーパー、外食の農業参入だけでなく、最近は中堅スーパーや地場の食品企業の参入が非常に盛んになっています。安心安全な地元食材を使っていることなどをブランド価値として打ち出せるようになってきたからです。ネット販売や宅配が発達したことで、今までアクセスできなかった遠隔地のコンシューマーにもブランドアピールできる」(三輪氏)
農家と企業の関係でいえばこれまで契約農家という形が多かったが、最近では相手農家に直接資本を入れたり、土地の一部を借り上げて自社農園にする傾向が出てきている。かつては農協依存が強かった農家の設備投資を、協働関係を結んだ企業が肩代わりするケースもあるという。
「農家と企業のバランスの取れたコラボレーションだけではなく、個別にやっていたらできなかったビジネスモデルにまで踏み込んで、今はいろいろな成功事例が出始めています」(三輪氏)
植物工場や水耕栽培の設備など、農業の技術革新や技術の安定化のタイミングが今は1つのピーク期にあるという。そこに農地法の改正が重なって、異業種からの参入が増えたことで、農業は新たなビジネスチャンスの開花期を迎えているのだ。