ミイラになっても生き続けた母親
高齢者の死一つをとりあげただけでも、さまざまな親子関係のかたちが見えてくる。同居の親が家族のいざこざを苦にして自殺しても、「病気を苦にしていた」という息子がいるかと思えば、母親の死をいつまでも認めない息子だっている。
あるケースで、警察官と民生委員が家の中に入ったとき、母親の死体はすでにミイラ化していた。居間のじゅうたんの上にきれいに寝かされていたそうだ。体にはきれいな布がかけられ、すぐそばのテーブルには食事が置いてあったという。
母親が死んだとき、40代の一人息子はそれを受け入れられなかった。誰にも言わず、もちろん葬式も出さずにずっと母親の死体と暮らしてきたのである。朝晩一緒にご飯を食べ、隣に布団を敷いて寝ていたという。線香はもちろんあげない。自分の中で母は死んでいないからだ。彼の場合は脳機能障害があり、母親の死を認知できなかったのだという。
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