目を閉じて服を着用できるのも「反射」のおかげ
正しい姿勢を保つには、無意識に重力と重心をコントロールする「反射」が重要であることをお伝えしました。
しかし、「反射」と言われても、目に見えないものだけに、なかなかイメージしづらいかもしれません。
「そもそも、反射って、一体どうやって起こっているの?」「意識して体を動かすのとは、何が違うの?」
そんな疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。そこで、無意識に正しい姿勢を作り出す「反射」のメカニズムをひもときながら、どうすれば、その力を最大限に活かせるのか。その具体的な方法を探っていきます。
私たちの体には、五感(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)以外にも、様々な感覚があります。例えば、次のようなものがあります。
・目をつぶっていても、腕がどこにあるか分かる「位置覚」
・体が傾いているのを感知する「平衡覚」
・筋肉の伸び縮みを感知する「運動覚」
これらの感覚は、神経を通じて脳へと伝えられます。そして、脳はこの情報をもとに、どのように体を動かすべきかを瞬時に判断し、筋肉に指令を送っているのです。
例えば、暗闇で手を伸ばして何かを探したり、自転車に乗ってバランスをとったり、目を閉じてもスムーズに服を着ることができるのも、この位置覚や平衡覚、運動覚のおかげです。
これが、私たちが意識することなく、瞬時に姿勢を調整したり、バランスを保ったりできる、驚きのメカニズム「反射」の正体です。
まずは「感じる」ことから始めよう
この「反射」の力を最大限に活かし、正しい姿勢を手に入れるためには、どうすれば良いのでしょうか。
その答えは、「感じる」ことから始めることです。
多くの姿勢を改善するような方法では、「正しい姿勢」を教え、それを意識的に作り出すことを推奨しています。
しかし、先ほどお伝えしたように、姿勢をコントロールしているのは、意識ではなく「反射」です。
つまり、いくら頭で「正しい姿勢」を理解していても、「反射」が正しく働かなければ、真の意味で正しい姿勢を手に入れることはできないのです。
そこで重要になるのが、「感じる」というプロセスです。
例えば、あなたが今、椅子に座っているとしましょう。
「お尻は、どのように椅子に触れていますか?」
「足の裏は、どのように床についていますか?」
「背骨は、今どのようなカーブを描いていますか?」
このように、自分の体で起きている感覚に意識を向けることで、眠っていた「受容器」が活性化し、脳に正確な情報が送られるようになります。
そして、脳は、その情報に基づいて、自動的に体のバランスを調整し始めます。これが、「反射」を利用した姿勢復元のメカニズムです。
「姿勢を良くしよう!」と意識的に力を入れるのではなく、「感じる」ことを通して、体の内側から変化を起こしていくことが重要なのです。