これは全社的な「change the rules of the game」(根本的な発想の転換)という考え方によるものだ。発想を変えることなく既存のアイデアのまま積み上げていくと細部に目がいき、奇をてらったり自己満足に陥ったりしてしまい、結局、消費者が求めているものとはかけ離れていってしまう。

「大事なのは、消費者が自然に抱く普段の気持ちにそったものになっているかどうかということ。いったん立てた仮説も、グループディスカッションしたり、他人のアイデアを聞いたりしているうちに『これは違う』と思ったら全否定してみる。企画をゼロに戻す勇気も必要なんだと思います」

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木村さんは消費者視点に立ち、新しい発想を持ち続けるために、できるだけ自分とは全然違う業界の人と会って話をするように心がけているという。また、消費者心理を読むために、電車の中や街中での人物観察も日ごろから意識的に行うようにしている。

「たとえば今日は同じ車両に紫色の服や小物を持った60~70代の女性が3人もいたんです。そこで、どうしてあのぐらいの年齢の女性の持ち物には紫色が多いんやろ?と考えてみるんです。何かの雑誌で特集していたのかな、とか、なんで紫色が好きなのかな?というふうに。そうやって考えていくことで新しいアイデアやヒントの芽が自然と生まれてきます」

木村さんによれば、ひとつの観察からひとつのアイデアが生まれるわけではなく「いろいろな場所で自分がストックしておいたアイデアが自分の思考となり、必要なときにそれが組み合わさって表面に湧き出てくる。それを自分の好みに偏らず、いかにたくさんストックできるかが大事」だという。世界30数カ国のネスレ社員が集まって行う研修で、海外のスタッフとディスカッションしたり、異文化体験することもいい刺激になっているようだ。