「大人のココア」を追求し、人気パティシエとコラボ
高木さんがつくるホワイトチョコは、カカオの味が際立っていて後味がさっぱりしているなど、今まで食べたホワイトチョコとはかなり違っていた。「これだったら飲み物にしてもおいしいんじゃないか」と思い、高木さんに交渉したところ快諾を得ることができ、コラボすることで合意。共同で原料から開発していくことになった。
コンセプトは「一流ショコラティエの味わいがご家庭で手軽に楽しめる大人のためのデザート」だ。いざ試作品づくりが始まった。しかし、原料が水をはじく性質であるため牛乳で溶かすタイプにしたところ、牛乳の味が勝ちすぎて、ココアの味が決まらないなど難航。何度も試作を繰り返した末、通常より長い1年以上の時間をかけてようやく完成に漕ぎ着けた。風味を立たせるためにバニラビーンズやチョコレートパウダーなども入れ、大人が満足できる、これまでにない味わいに仕上がった。
木村さんは言う。
「品質やおいしさは当たり前。そのうえにプラスアルファの価値が求められる。誰でもアイデアは出せるけれど、それをきちんと実現していくことが大事やと思うんです。私には『それ、おもろいやんか。やってみたらええやん』と言ってくれる柔軟な上司がいたのがラッキーでした」
飲料ビジネス部は木村さんと上司の2人だけの部署だ。同社のコーヒー以外の飲料を担当している。木村さんが直感で行動するタイプなら上司は正反対の冷静沈着タイプ。2人の絶妙なコンビネーションに加えて、プロフェッショナルの職人である高木さん、そして周囲を巻き込んでいく形となった。
ココアの材料を高品質化するなどマイナーチェンジによる差別化ではなく、「なぜ、世の中に白いココアはないのか?」という小さくとも斬新な発想を起点にしてそれを膨らませていき、高木さんに依頼するまで踏み込んでいったことが功を奏したのだ。